常に再開発を繰り返しながら、その姿を変え続けている大都市・東京――。
この街には「何でもあるが、何もない」。
いまこの瞬間に生きる私たちは、この街にいったい何を求めているのだろう。
| 上津原[うえつはら] 佐和子 (26)は、グラビアなどのタレント活動をしながら、個人で芸能マネジメント業務を行なってきたが、親族や投資家の協力によって、最近会社を設立した。彼女にはプライベートの時間がほとんどなく、ただ会社を大きくすることを目的として、忙しい毎日を送っていた。上津原の考える将来は楽観的でポジティブだ。 |
| 宇賀真理子 (32) は、10年間勤めた会社を最近辞め、アルバイト生活を始めた。実家を離れ、東京で初めてのひとり暮らしを始めた。彼女の毎日は、アルバイト以外、ほぼ全てがサックスの練習と作曲活動である。夢は、プロのミュージシャンとして独り立ちすること。これまでなかなか決断できずにいた。サックスを始めたのも大学時代からで、もっと早くから始めていれば良かったと後悔していた。しかし、宇賀はその「失った時間」を必死に取り戻そうと毎日を過ごしていた。 |
| 松口玲子 (29) は、透析専門の病院で看護師として働いていた。出版関係の仕事をする夫がおり、最近、都心に1LDKのマンションを購入した。仕事のほかは、夫と一緒に好きなゴルフに興じる毎日。しかし将来は子供も欲しい。都心で夢の生活を手にしたものの、いざ将来のための現実を考えると不安も多い。この「家」は本当に正解だったのか? |
| 後藤真理子 (20) は、大学の狂言研究会の部長を務めている。差し迫ってきた学園祭を期に、部長職を辞して、就職活動に専念することになる。彼女は、狂言に関わる仕事か、日本の伝統文化に関わる仕事に就きたいと思っている。男中心の狂言の世界で、女性としてプロ狂言師になることはほぼ不可能に等しい。たまに男に生まれていたらと思うこともあるが、でも狂言に関わっていけるだけでいい。後藤の狂言を愛する気持ちは一途である。 |
「日常」は、大きな事件もなく、いつも通りに過ぎ去っていく。
大きな夢や目的を持っていても、いつも通りに「日常」は繰り返されていく。
カメラはそんなありのままの姿を捉え続けていく…
| 古瀬真弓 (23) は、水商売の世界で刹那的な生活をしてきたが、1年半前にポールダンスと出会って、これが自分の生きがいなのだと確信。歌舞伎町でダンサーとして働き始めた。競技ダンスの世界大会にも出たい。開店前は一般人向けにダンスのレッスンもしており、ポールダンス一色の毎日。一見派手な生活の彼女ではあるが、実際は実家で両親と共に暮らし、動物を愛する普通の女性であった。 |
| 美元[ミヲン] (27)は、準ミスユニバースジャパンを受賞したトップモデルであるが、最近、映画女優としてデビューを果たした。だがその役柄は肌の露出も多く、過激な内容のもの。出演に際して、彼女にはかなりの葛藤があった。東京で行なわれた国際映画祭では父親も鑑賞したが、上映途中で抜け出した。幼い頃に亡くなった母親の墓参りを期に、娘と父の「素顔」が浮かんでくる。 |
| 塩沢美樹子 (27)は、ボクササイズのインストラクターのアルバイト。だが彼女は仕事を辞めようと思っていた。この仕事にこだわりがあるわけでもなく、会社の上司もあまり好きではないから。アフリカのような自由な生活を求める彼女には、窮屈な印象なのだ。しかし、27歳にもなってこんな気ままな生活で良いものかとも考える。だがどうしたらいいか分からない。家族や親族からも「きちんとしなさい」と言われるが、塩沢の模索は続く。 |
| 荒木裕子 (34) は、大手企業でゲームの音響プロデューサーとしてキャリアを積んできたが、最近突如退社した。現在は無職。内縁の夫と共に、下北沢の一戸建てに住んでいる。荒木が目下励んでいるのは、愛する下北沢で進められている再開発計画に対する反対運動。全てを一気に変えてしまう現在の計画には疑問がある。それまで生きてきた人たちの過去を全て消し去って、未来だけを目指そうとする再開発の考え方は、果たしてどうなのか? |
私たち日本人は、自分の「素顔」を隠しながら生きている傾向が強い。
だがカメラの前では、自分のカッコよさも、悪さも、ありのままが映し出されていく。
もし彼女たちの一人が私たち自身であったら?スクリーンは私たちにも問いかけてくる。
東京は私たちを無視して、容赦なく変わり続けていく。
私たち「ニッポン人」は、そんな流れゆく街の中で、
いったいどうしたら「本当の幸せ」をつかむ生き方ができるだろうか?